この記事では、材料配合、発酵プラン、成形、焼成、保存に分解し、各工程で「どれくらいまでが許容か」を数値で示しながら、実用レシピに落とし込みます。
- 加水率と粉のたんぱく質で弾力と伸展を設計
- 油は配合内と表面の二段で水分保持と香りを両立
- 発酵は温度帯の使い分けで内相のしっとり感を制御
- 成形は休ませで面の張りを残し気泡を温存
- 焼成は予熱と厚みで水分ロスを最小化
- 保存とリベイクは温度時間の手順化で再現
フォカッチャレシピはもちもちで決める|実例で理解
「もちもち」は弾力のある咀嚼感としっとり内相の両立です。指で押すとゆっくり戻る弾性、噛み切りで密度を感じる粘性、口溶けで油分が支える保湿性が揃うと評価が安定します。ここでは粉・水・塩・油・酵母の比率を起点に、工程の短縮や置換をしても崩れにくい基準を用意します。
配合の標準値と可変レンジ
粉100に対して水72〜78、塩2.0〜2.2、オリーブオイル4〜6、ドライイースト0.5〜0.8を起点にします。もちもち寄せでは油をやや多め(5前後)に設定し、水分保持と老化耐性を高めます。糖は0.5〜1.5の範囲で色づき補助にとどめ、甘味は主張させません。
粉の選び方で弾力を描く
準強力粉主体は伸びと薄皮のバランスが良く、強力粉を30〜50%混ぜると弾力が明確になります。全粒粉は5〜8%で香味を補い、セモリナは10%前後で歯切れを明瞭化。もちもち狙いでは強力粉の比率をやや上げ、加水は72〜76の帯で調整します。
塩と油の二段設計
塩は弾力の輪郭を整え発酵速度を穏やかにします。2.2%の上限を意識し、香りを痩せさせない範囲で設定します。油は配合内で保湿、表面で熱伝達と薄皮のパリ感を作る二段構えです。表面用は焼成直前と直後の2回を基本にします。
オートリーズと折りたたみの役割
混合後10〜20分休ませ(オートリーズ)→濡れ手で2〜3回のストレッチ&フォールドで面のつながりを作ります。過度な機械力は粘性を増やしすぎるため避け、時間と油でしっとり感を引き上げます。
酵母量と温度の初期設計
室温仕上げなら0.6〜0.8%、低温長時間なら0.2〜0.4%。生地温は22〜24℃を目標にし、水温で合わせ込みます。生地温が上がり過ぎると表面は伸びても内相が粗くなり、もちもち感が鈍化します。
- 粉と水を混合(粉気が消えるまで)
- 10〜20分休ませる
- 塩と油を散らしストレッチ&フォールド×2〜3
- 室温で軽く膨張→冷蔵またはそのまま一次発酵
- 体積1.7〜2.0倍で成形へ
ミニFAQ
Q: 砂糖は増やすべき? A: 色づき補助に1%前後まで。増やすほど弾力が鈍く感じます。
Q: 油6%は多い? A: 口溶けは上がりますが重さも出ます。5%を上限に様子見が無難です。
Q: もちもちと大穴気泡は両立? A: 厚み2.0〜2.3cmで高加水寄りにすると折衷が可能です。
配合は「水72〜78・塩2.0〜2.2・油4〜6」を基準に、粉のたんぱく質で弾力を描きます。順序と休ませで面を作り、過度な力を避けるのが要点です。
加水率と粉の選択で決まるもちもちの質感

同じ「もちもち」でも、歯の入り方・戻り・口溶けの印象は加水率と粉の種類で変わります。たんぱく質量だけでなく、グルテン質の質とデンプンの老化挙動が関与するため、狙いに応じた配分が重要です。
強力粉と準強力粉の配分戦略
強力粉比率を上げると弾性は明瞭になりますが、内相の水分保持が不足するとボソつきやすくなります。準強力粉70〜80%+強力粉20〜30%はバランスが良く、厚み2.0cm前後でしっとり感が出やすい帯です。
全粒粉・セモリナ・米粉の使いどころ
全粒粉5〜8%は香りと保水性を補い、セモリナ10%は歯切れを引き締めます。米粉5%はしっとりを助けますが、入れ過ぎると脆くなるため少量にとどめます。もちもち狙いでは小麦中心で微調整が無難です。
加水ごとの食感の目安
72%:扱いやすく均質、弾力は素直。75%:しっとりが増し、噛み切りの粘性も上がる。78%:薄皮との対比が強まり、もち感と軽さの両立が可能。粉の吸水で±2%の調整余地を持たせます。
準強力粉主体:軽い薄皮と均一なもち感。強力粉高め:弾性が強く戻りが遅い。全粒粉少量:香りと保湿が伸びるが気泡は微細寄り。
- 加水72→比容積2.3〜2.4(標準)
- 加水75→2.4〜2.6(しっとり増)
- 加水78→2.6〜2.8(軽さともち感の折衷)
コラム:たんぱくの「質」
同じ量でもグルテニン/グリアジン比で伸びと戻りの印象が変わります。地域粉を変える時はまず水だけを±2%調整し、油と塩は固定して比較すると傾向が掴みやすいです。
粉は準強力主体に強力粉を足して弾力を描き、加水は75%前後を基準に微調整。全粒粉・セモリナは香味と歯切れの補助に使います。
発酵プランで内相のしっとりと弾力をコントロール
もちもちの核は発酵の進め方にあります。室温で短時間にまとめる方法と、低温長時間で香りとしっとりを乗せる方法の二軸を持ち、目的で切り替えます。温度帯・体積・触感の三指標で合図を言語化しておくと安定します。
室温時短の型
生地温22〜24℃で室温30〜60分。体積1.6〜1.8倍で成形へ。油膜で乾燥を防ぎ、予熱と並走させて待ち時間を圧縮します。時短では加水72〜74、油4〜5が扱いやすい帯です。
低温長時間の型
冷蔵3〜6℃で12〜24時間。体積2.0〜2.2倍、指跡がゆっくり戻る程度で成形へ。油5〜6で保湿を伸ばし、厚み2.0〜2.3cmに設定すると噛み切りの粘性が際立ちます。
合図のベンチマーク
縁が自立、表面に細かい気泡、指で押すと戻りがゆっくり。二つ揃えば次工程へ。数値と触感の両輪で判断すると失敗が減ります。
ベンチマーク早見
20℃:60分前後/24℃:40分前後/28℃:25分前後
冷蔵12h:イースト0.4%/24h:0.2〜0.3%
事例:香りが弱い日、冷蔵を6時間延長し油5%へ調整。焼成後の口溶けが改善し、弾力は保ったまましっとりが増した。
チェックリスト
室温測定→水温調整→休ませ→折りたたみ→体積と指跡→成形→予熱→投入の順を固定化します。
温度帯ごとの合図を持ち、イースト量と時間を連動させます。低温長時間は香りとしっとり、室温時短は扱いやすさで選びます。
成形と厚み設計で「もちもち」を可視化する

成形は面を壊さず厚みと気泡分布を決める工程です。休ませで伸展性を回復させ、油膜の滑りで面積を広げます。厚みは2.0〜2.3cmに設定すると、噛み切りの抵抗と内相の湿りがバランス良く仕上がります。
休ませと油膜の使い方
天板に大さじ1の油を薄く広げ、生地を落として10〜15分休ませます。自重で広がった後、指先に油を付けて端から中央へ押し広げます。縁にはわずかに厚みを残し、水分の逃げを抑えます。
ディンプルの深さと間隔
第一関節まで沈め、格子状に3〜4cm間隔で配置。穴をつなげないのが要点です。塩は谷に軽く、油は全体に薄く回します。トッピングの水分は拭き取ってから乗せます。
具材と塩分の設計
玉ねぎは薄切りを油で和えてから、トマトは種を軽く除く、オリーブは水気を切る。生地側の塩2%は固定し、仕上げのフレークソルトで輪郭を整えます。
| 厚み | 加水 | 油(配合内) | 食感の傾向 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| 1.8cm | 72% | 4% | 軽めの弾力 | サンド系 |
| 2.0cm | 75% | 5% | 標準のもち感 | 汎用 |
| 2.3cm | 76〜78% | 5〜6% | 強い粘弾性 | 単体提供 |
よくある失敗と回避
中央が薄い→端から中央へ押し広げる順序を逆に。
大穴が多い→ディンプルを浅く均一に、焼成前に5分ベンチ。
厚み2.0〜2.3cm・均一ディンプル・油膜の三点で水分保持と弾力を視覚化します。粉足しではなく休ませと油で整えます。
焼成パラメータで水分保持と薄皮を両立
もちもちを損なわずに薄皮を作るには、予熱の質・位置決め・時間配分が鍵です。初速の熱流束で表層を決め、後半は色づきと乾燥を微調整します。家庭オーブンは表示温度と実温がずれることが多いため、一度校正しておくと安定します。
予熱と位置の基準
230℃で20分以上、天板ごと予熱。二段なら上段、底色が弱い日は鋼板や石を併用。油膜は熱伝達を助け、短時間でも色と香りを引き上げます。
スチームと湿度の扱い
霧吹きは投入直前に一回だけ。水皿は温度降下が大きくもちもちを損ねやすいので避け、油の表面張力を活かして均一加熱に寄せます。
焼き色と余熱の基準
縁が濃い琥珀、表面が中きつね色で取り出し、網で1〜2分余熱を逃がしてから表面に薄く油を塗ります。切り分けは5分待って蒸気を落ち着かせます。
- 230℃×15〜18分(厚み2.0cm):標準のもち感と薄皮
- 220℃×18〜22分(厚み2.3cm):しっとり優先
- 240℃×10〜12分(薄め):薄皮強調、内相は軽め
ミニ統計
天板予熱20分→初速膨張比+10〜12%相当/油膜あり→底色到達1〜2分短縮/上段使用→表面色ムラ低減傾向
ミニ用語集
比容積:焼成後の体積/粉量。
熱流束:単位面積あたりの熱の流れ。
内相:クラム。外皮:クラスト。
予熱の質と位置決めを固定し、油膜で均一加熱に寄せます。色の合図と余熱処理で水分を逃がし過ぎないようにします。
フォカッチャレシピをもちもちで仕上げる実用レシピ
ここまでの指標をレシピに統合します。配合はg換算、厚み2.0〜2.3cmを前提に工程時間の目安を併記します。
標準もちもち(加水75%・油5%・24h低温)
準強力粉300・水225・塩6・オリーブオイル15・ドライイースト0.7(室温→冷蔵24h)。混合→休ませ15→ストレッチ2→塩油→室温30→冷蔵24h→室温戻し30→成形→230℃15〜18。
弾力としっとりのバランスが標準です。
リッチもちもち(加水76%・油6%・36h低温)
粉300・水228・塩6.2・油18・イースト0.4(冷蔵36h)。厚み2.3cm、220℃18〜22で色を見て仕上げ。口溶けが増し噛み切りはやや重め、単体提供に向きます。
即日もちもち(加水72%・油4%・時短)
粉300・水216・塩6・油12・イースト0.8(室温時短)。混合→休ませ10→ストレッチ2→室温45→成形→230℃15〜17。厚み2.0cmで弾力を明瞭に、内相はやや軽め。
- 混合と休ませで面を作る(10〜20分)
- 塩油を散らしストレッチで均一化
- 発酵は体積と指跡の合図で切り上げ
- 成形は油膜・均一ディンプル・厚み確保
- 予熱強化→高温短時間→余熱処理→仕上げ油
コラム:仕上げの塩とハーブ
仕上げ塩は角の少ないフレークタイプを少量、ハーブはローズマリーを主体に。油と同時に軽く当てると香りの層が整います。
標準・リッチ・即日の三型を使い分け、厚みと油量で口溶けを調整します。工程は合図で区切り、迷いを減らします。
まとめ
もちもちを安定させる鍵は、配合(加水・塩・油)と温度(生地温・室温・予熱)を数値で運用することです。強力粉の比率と厚みで弾力を描き、オートリーズと少回数の折りたたみで面を作り、油膜と均一ディンプルで水分を抱えたまま焼成します。
保存とリベイクの導線まで手順化すれば、家庭でも「指で押すとゆっくり戻る」「噛み切りに粘りがある」「口溶けがしっとり」の三条件が揃い、狙いどおりのフォカッチャに到達できます。


