- 基準は「スキムミルク1:水9」で再構成スキム100です。
- 牛乳は固形分約9%、水分約87%、脂肪約3〜4%が目安です。
- 置き換えは「固形分をそろえる」「余剰水を引く」の二段構成です。
- ブランド差は栄養表示で補正します。誤差枠は±5%が実務的です。
- パン生地は吸水も調整します。加水率を数値で記録します。
スキムミルクの代用は計算で迷わない|短時間で把握
導入:核になるのは二つの数だけです。スキムミルクは水と混ぜると約10%固形分の再構成スキムになり、牛乳は約9%の無脂乳固形分を含みます。代用は、この固形分を同等に合わせ、水分の過不足を調整する作業に分解できます。
| 対象 | 固形分(目安) | 水分(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| スキムミルク粉末 | 約96% | 約4% | 脂肪ほぼゼロ |
| 再構成スキム | 約10% | 約90% | 家庭で再現しやすい |
| 無脂肪乳 | 約9〜10% | 約90% | 脂肪ゼロ |
| 牛乳(全乳) | 約9% | 約87% | 脂肪3〜4% |
| 低脂肪乳 | 約9% | 約88〜89% | 脂肪0.5〜1.5% |
ミニFAQ
Q:牛乳に完全一致させる必要はありますか。A:いいえ。固形分を合わせ、水分を調整すれば十分です。脂肪の差は風味の違いとして受け止め、油脂量で微調整します。
Q:水の減らし方に迷います。A:「入れる牛乳の水分量」を差し引きます。牛乳の水分はおよそ重量の87〜89%で見積もります。
Q:代用で塩は変えますか。A:基本はそのままです。味が薄ければ0.1%だけ足して様子を見ます。
基本式を一つだけ覚える
粉末Pグラムのスキムミルクを液体に置き換えるとき、再構成スキムの固形分は約10%です。したがって必要な液量M=P÷0.10=10Pで求まります。これは無脂肪乳にもほぼ転用できます。牛乳で代用する場合は無脂乳固形分を約9%とみなし、M=P÷0.09≒11.1Pで計算します。
水の差し引きはこう考える
液体を入れると水分が余ります。再構成スキムでは水分は90%なので、加える液量の90%を水から差し引きます。式は減水量=0.90×Mです。牛乳なら水分は約87%なので減水量=0.87×Mが目安です。これで生地の総水分は元レシピと同等になります。
パンの加水率に落とす
粉100に対する水の重さを加水率と呼びます。代用で水を引いた後の加水率が下がり過ぎると、窯伸びが鈍ります。計算の最後に「総水量÷粉量」で再確認し、±2%の枠に収めます。もし低ければ水を1〜2%だけ戻します。味より作業性を優先する場面では、この微調整が効きます。
ケーキや料理への応用
カスタードやクリームコロッケなど、でんぷんが主役の料理は水分過多に弱いです。牛乳代用で余剰水を引くことは、ダレを防ぐ第一歩になります。脂肪分の違いは口溶けに影響します。全乳を使うときはバターを5〜10%控えると口当たりが整います。
誤差の吸収と記録
固形分は季節や個体差でわずかに動きます。結果は一度で揃わなくても構いません。差は記録で吸収します。粉量、液量、減水量、出来上がりの質感を最低限メモすれば、次回以降は数値が導きます。再現性は記録の積み重ねで完成します。
式は二つ、M=10P(無脂肪相当)とM≒11.1P(牛乳)。水は液量の87〜90%を引く。この枠だけで代用は安定します。
牛乳・低脂肪乳・無脂肪乳で置き換える計算

導入:液体乳への置き換えで迷うのは、量の決め方と水の引き方です。ここでは固形分から逆算し、脂肪の差を軽く補正する現実的な方法に絞ります。パンでも菓子でも故障が少ない流れです。
ミニ統計
- 一般的な牛乳の無脂乳固形分は8.6〜9.4%の範囲で推移します。
- 脂肪は0〜4%の幅で、口溶けと焼き色へ寄与します。
- 再構成スキムは10%前後で安定し、計算の基準が立てやすいです。
手順ステップ
- レシピのスキムミルク量Pを確認します。
- 代用する乳の種類を決め、固形分比を把握します。
- 必要液量Mを計算します(無脂肪乳10P、牛乳約11.1P)。
- 水の減量を求めます(無脂肪乳0.90M、牛乳0.87M)。
- 脂肪の差は油脂を微調整して吸収します。
比較ブロック
無脂肪乳:計算が最も素直。焼き色はやや控えめ。風味はすっきり。
低脂肪乳:扱いやすく、口当たりが柔らかい。油脂は5%控えめに。
牛乳:焼き色が乗りやすい。油脂は5〜10%控えて釣り合いを取ります。
具体例で理解する(パン生地)
強力粉300g、水200g、スキムミルク10gの食パンを、牛乳で置き換えます。必要な牛乳はM≒11.1×10=111g。水の減量は0.87×111≒97gです。新しい配合は水103g、牛乳111g、スキムミルクは0に置換。加水率は(103+111)÷300=71.3%で元とほぼ同等に収まります。
菓子の生地での加勢
パウンドケーキでスキムミルク20g、水40gを使うレシピを、無脂肪乳へ。M=10×20=200g。水の減量は180g。新しい配合は無脂肪乳200gと水−180g、スキムミルクは0。油脂は変えずにまず焼き、重さと焼き色を確認します。重いと感じるなら油脂を5%削ると落ち着きます。
脂肪の補正と塩分
牛乳で代用すると脂肪が加わります。パンは柔らかさが増し、菓子は口溶けが滑らかになります。過度にコクが出る場合は、レシピのバターやショートニングを5〜10%控えます。塩分は基本そのままで構いませんが、味が薄いときは粉量対比で0.1%だけ足すと輪郭が戻ります。
液体乳の代用は「Mの算出→減水→脂肪を微調整」。動かす点を絞れば、味と作業性は安定します。
コーヒーミルクやクリーマーで置き換える計算
導入:常備のクリーマーやコーヒーミルクで代用したい場面もあります。ただし原料が乳由来のみの製品と、植物油脂主体の非乳製品では計算の軸が異なります。栄養表示から固形分相当を拾い、式へ当て込みます。
無序リスト
- 乳由来のみの粉末(例:ピュアクリーマー)は乳固形分を基準にします。
- 非乳クリーマーは脂肪と糖が主体。乳たんぱくは少なめです。
- 液体ポーションは水分が多いので、必ず水を差し引きます。
- 香料や乳化剤は風味と粘性へ影響します。過量は避けます。
- まずは代用率50〜80%から試し、段階的に上げます。
コラム
「家にあるもので仕上げたい」が代用の原動力です。重要なのは、何をもって「等価」とみなすかです。パンでは乳たんぱくと乳糖が香りと焼き色を支えます。脂肪は柔らかさの調味料です。どの要素を合わせるかを先に決めると迷いません。
乳由来粉末クリーマーでの算出
栄養表示からたんぱく質+糖質+灰分+脂肪を足し、これを固形分S%とします。スキムミルクPgの代用量XはX=(P÷0.10)×(0.10÷S)で求めます。水は「Xの水分相当」を差し引きます。粉末の水分は2〜4%が一般的なので、0.96を固形分換算の係数として用いると実務に合います。
非乳クリーマーでの算出
非乳は乳たんぱくが少なく、乳糖も弱めです。風味の等価よりも質感の等価を狙いましょう。粉末なら固形分は概ね95%以上です。代用量は「香りを邪魔しない範囲」としてPの70〜90%に設定し、水の調整は最小限にします。焼き色が強く出たら糖を2%減らして揃えます。
液体ポーションでの算出
液体ポーションは水分が多く、脂肪と糖が次いで多い構成です。固形分をS%としたとき、必要本数はX=(10P)÷(内容量×S)で概算できます。差し引く水は内容量×(1−S)×本数です。香料の強さが出やすいので、まずは半量から試し、風味を見て段階的に増やします。
クリーマー代用は「栄養表示→固形分S→式へ代入」。非乳は過度に頼らず、香りのバランスを優先します。
粉乳の種類別換算(全粉乳・やぎ乳・調整粉乳)

導入:スキムミルク以外の粉乳も手に入ります。全粉乳は脂肪を多く含み、やぎ乳は香りに個性があります。調整粉乳は砂糖や乳糖が加えられることもあります。種類に応じて計算軸を少し変えます。
ミニ用語集
全粉乳:生乳を乾燥。脂肪26〜28%、固形分はほぼ100%。
脱脂粉乳:スキムミルク粉末。脂肪ほぼゼロ、固形分約96%。
調整粉乳:糖やビタミンなどを加えた粉乳。味が安定。
やぎ乳粉末:脂肪は全粉乳並。香りは軽くナッティ。
MSNF:無脂乳固形分。乳たんぱく+乳糖+灰分の総称。
ベンチマーク早見
- 全粉乳を使うときは油脂を5〜10%控える。
- やぎ乳粉は香りが出やすい。配合はまず半量で。
- 調整粉乳は糖が入ることがある。砂糖を2%減らす。
- 再構成濃度は10〜12%を上限にすると作業性が良い。
- 塩は粉量対比1.8〜2.0%を基準に据える。
事例:全粉乳で置き換えた食パン。スキム10g→全粉乳10g、水は同量。焼き色が強く柔らかすぎたため、次回はバターを8%減、砂糖を3%減に修正。香りは豊かで、サンド用途に好適だった。
全粉乳での換算
全粉乳は脂肪が約26〜28%です。固形分はほぼ100%なので、スキムミルクPを全粉乳に置き換えるなら量は同じで構いません。ただし脂肪が乗る分だけ、パンならバターを5〜10%、菓子なら生クリームを5%控えます。焼き色が早いときは砂糖を2%減らすと均衡します。
やぎ乳粉末での換算
やぎ乳は香りに個性があります。量はスキムと同量から始め、香りが強ければ10〜20%減らします。固形分はほぼ100%なので水量は変えません。パンではコーンや雑穀と合わせると相性が良く、香りの主役が分散してバランスが取れます。
調整粉乳での換算
調整粉乳は糖やビタミンが加えられることがあり、再構成濃度もパッケージで指定されます。まずは指定濃度で再構成し、スキムの計算式と同様に固形分を合わせます。糖分がある場合は砂糖を2〜5%減らすと甘さが整います。香料が強いときは半量で評価します。
粉乳の種類が変わっても「固形分を合わせる」が軸です。脂肪や糖の差は別枠で少しだけ補正します。
製パンの吸水と塩分バランスを数値で整える
導入:代用計算が正しくても、パンは水と塩のわずかな差で印象が変わります。吸水は生地の骨格を、塩は発酵と味の輪郭を制御します。ここでは計算結果を製パンの言葉に翻訳します。
有序リスト
- 代用後の総水量を確認し、加水率を算出します。
- ターゲット加水率(例:68%)を決めます。
- 差が±2%を超えるなら水で微修正します。
- 塩は粉対1.8〜2.0%。風味で0.1%刻みで動かします。
- 油脂は牛乳代用時に5〜10%減で様子を見ます。
- 一次発酵は体積1.6〜1.8倍で止めます。
- 焼成は色で合わせず、芯温で合わせます。
よくある失敗と回避策
水っぽい:減水が足りません。牛乳の水分87%を再計算して差し引きます。
固い:加水率が低すぎます。粉対1〜2%の水を戻して再試作します。
色だけ濃い:砂糖を2%減らすか、後半温度を下げます。芯温で判断します。
食パンでのターゲット設計
食パンは型の制約があるため、加水率の変動に敏感です。代用後の加水率が狙いより低ければ、仕込み水を粉対1%ずつ戻します。塩は2.0%を上限にし、味の薄さは乳成分よりも塩の微調整で整えます。乳の香りは二次で伸びるため、焦らず焼きに持ち込みます。
ハード系での落とし込み
ハード系は皮に色が入りやすく、牛乳代用は焼き色の加速要因になります。焼成前半は蒸気を閉じ込め、後半は温度を落として色をコントロールします。水分は仕込みで調整するよりも、折りたたみ回数で微調整するとクラムの荒れを抑えられます。
菓子パンでのまとめ方
菓子パンは油脂や砂糖が多く、乳の置き換えが味に直結します。牛乳代用では油脂を5%控え、砂糖を2%下げるとバランスが良いです。香りを強めたい日は全粉乳を一部使い、粉対2〜3%を追加します。過度の香料は避け、焼き戻しで香りを引き上げます。
代用の式をパン言語に翻訳する鍵は加水率と塩。数字で微調整すれば、風味は狙いどおりに近づきます。
代用計算の自動化と記録テンプレート
導入:一度きりの計算では終わりません。ブランドや季節で条件は動きます。だからこそ、表計算のテンプレート化と最小限の記録で、次回を速く正確にします。ここでは手計算を仕組みへ変えます。
手順ステップ
- 入力欄を作ります:粉量、元レシピの水、スキム量、代用種別。
- 固形分係数を定義します:再構成0.10、牛乳0.09、無脂肪0.10。
- 必要液量M=P/係数、減水量=水分率×Mの式を入れます。
- 新総水量と加水率を自動算出し、±2%の警告を出します。
- 実測の焼き色や食感をメモ欄へ残します。
ミニ統計
- 記録3回で加水率のブレは半分以下に収束します。
- 脂肪の微調整は±5〜10%で十分な範囲に収まります。
- 再現性の指標は「加水率±1%以内」「芯温97±1℃」が使いやすいです。
ミニFAQ
Q:銘柄が変わるたびに係数も変えますか。A:はい。栄養表示の無脂乳固形分や脂肪から水分率を再計算し、係数へ反映します。
Q:毎回の入力が面倒です。A:前回値を初期値にし、差分だけ上書きします。繰り返すほど手数は減ります。
Q:スマホでも運用できますか。A:クラウド表計算を使えば可能です。キーボード入力が少ない設計にします。
テンプレートの最小形
シートは「入力」「計算」「記録」の三枚で十分です。入力では粉量やP、水量、代用種別を選択。計算ではMや減水量、加水率、脂肪補正の目安を表示。記録には焼き色、香り、食感、作業感を簡潔に残します。検索できる形に整えておけば、次回の基準がすぐ見つかります。
警告と提案のロジック
加水率の差が±2%を超えたら警告、±4%で強警告。牛乳代用時は「砂糖2%減/後半温度−10℃」など提案を表示します。記録欄にチェックボックスを置き、採否を残すと次回の提案精度が上がります。簡単でも働く仕組みが大切です。
共同レシピの管理
家族やチームで共有するなら、銘柄ごとの係数表を別シートに作ります。新しい商品が来たら追記し、日付とロットを残します。差異があっても議論は数字ですぐ済みます。感想は自由に、式は共通に。これが再現性の土台になります。
自動化は「入力最小・判断自動・記録簡潔」。道具は軽く、数式はシンプルに保つほど続きます。
まとめ:代用の迷いは数字で解けます。スキムミルクは固形分、牛乳は固形分と水に分けて考え、M=10P(無脂)/11.1P(牛乳)で液量を出し、水は87〜90%を差し引きます。パンでは加水率と塩を言語にし、焼き色は温度と糖で整えます。クリーマーや粉乳の多様性も、栄養表示から固形分を拾えば同じ土俵に乗ります。最後に残る差は好みです。記録を重ね、あなたの基準を育ててください。


